断熱材の裏事情~日本とヨーロッパの違い~

断熱材の裏事情について

実は、断熱材選びで重要なのは耐用年数なんです!

住宅の性能を決める大事な材料の一つ、断熱材。

今回はこの断熱材の裏事情ということでご紹介していきたいと思います。建材としては当たり前の断熱材ですが、皆さんの知らない部分をお伝え出来ればと思います。

耐用年数

【今回の記事のポイント】
✓断熱材の特徴や性能についてよくわかる。

更新日:2023/7/22
初稿:2020/1/8

《目次》
一般的な断熱材の断熱の仕組み(グラスウールの場合)
長期安定性があるEPS断熱材の構造とは?
空気以外を使うと…
断熱性能は経時変化する
まとめ

通常であれば、最初に施工した断熱材をそのまま使い続けることが多いと思いますが、その耐用年数はどれくらい? 30年、40年、それ以上? しかし、断熱材の断熱性能って少しづつ低下していくってご存知でしたか?

実はウレタンフォームやウレタンボード、フェノールフォームなどの断熱材ですと下記の表の通り、時間とともに性能が低下していきます。

正規熱抵抗の経時変化

弊社のEPS断熱材パイナルフォームは、時間が経過してもほとんど性能の低下がなく(長期安定性が高く)ほとんど劣化しません。

一般的な断熱材の断熱の仕組み(グラスウールの場合)

グラスウール
通常、断熱材は空気をとらえて動けなくして、その空気をバリヤーとして熱を伝えにくくする仕組みです。
グラスウールなど繊維系断熱材であれば、非常に細い糸状のフワフワした材料がたくさんの空気を含んで断熱性能を発揮します。
グラスウールの原料はガラスになりますので、高温で溶かし、遠心力などの力で細かく繊維状のものとなります。

長期安定性があるEPS断熱材の構造とは?

発泡スチロールの拡大写真

EPS断熱材のビーズ法ポリスチレンフォームは、ポリスチレン樹脂と炭化水素系の発泡剤からなる原料ビーズを予備発泡させた後に、金型に充填し加熱することによって約30倍から80倍に発泡させてつくられます。
樹脂の微細な気泡が部屋となり、そのたくさんある部屋の中に空気を蓄えている構造になります。セル、と呼ばれる小さな部屋に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮させることができます。

※ビーズ法ポリスチレンフォームは、「Expanded Poly-Styrene」の頭文字をとって「EPS」と呼ばれており、ドイツで生まれた代表的な発泡プラスチック系の断熱材です。

空気以外を使うと…

ボード(板状)断熱材の中でも、フェノールフォーム断熱材など、いわゆる高性能断熱材と呼ばれているモノの多くは、空気の代わりに断熱性の高いガスを使用しています。そのため”初期値では”他の断熱材に比べて断熱材の厚みを薄くすることが可能です。

また、このガスはフロンガスを使用しているものも多く、環境へも悪影響が問題視されていました。現在ではその問題を解決するべく、ノンフロンのものが開発され使用されているようです。

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断熱性能は経時変化する

ここではボード(板状)断熱材に絞って話をします。

残念ながら断熱材の断熱性能は少しづつ劣化します。これにはいろいろな要因がありますが、大きいのは「断熱性の高いガスが空気と置き換わること」でしょう。
先ほど、”初期値では”と言ったのは、ガスが断熱材内に保っている状況のことです。しかし時間が経つと少しづつガスが抜け、空気と入れ替わっていくと言われています。

ちなみに、発泡スチロール断熱材はボード(板状)断熱材の中でも経時変化が極めて少ない断熱材です。
先程も掲載いたしましたが、図を見てもらうと、弊社EPS断熱材パイナルフォームの材料である発泡スチロール(ビーズ法ポリスチレンフォーム)は、フェノールフォーム、スタイロフォーム(押出法ポリスチレンフォーム)、硬質ウレタンフォームなどに比べて断熱性能の経時変化は極めて少ない(長期安定性)ことが分かります。
板状断熱材の断熱性能経時変化について

まとめ

断熱材は程度の差はありますが、ウレタンフォームやウレタンボード、フェノールフォームなどの通常の断熱材の性能は経年変化によって性能が劣化してしまうということです。
(上の写真は住宅の断熱材の経年劣化の様子)

また、壁体内結露やそもそもの施工不良によって断熱材の性能が大きく劣化することもあります。
(特にグラスウールは施工が難しいのですが、それはまた別の機会に)
断熱材の性能を最大限に発揮するには、その断熱材の特性をよく理解している工務店さんを選ぶ、ということも大事かもしれませんね。

何がいいか?何を取るか? それぞれの断熱材によって価格も違えば、性能も違います。すべてを熟知して検討するには勉強が必要ですが、少しの知識を持った上で、専門家に相談しつつ判断が出来るのが望ましいでしょう。皆さんも後悔のないよう、数年先まで見越して準備をしていくことが大事ですよ!弊社にも専門家が居ますのでお気軽にお問い合わせください。

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断熱材の裏事情2:ヨーロッパの断熱材事情

住宅を建てるときに欠かせない断熱材。日本ではどんな断熱材が多く使われているかというと、繊維系断熱材(グラスウール、ロックウールなど)か板状断熱材(EPS、XPS、フェノールフォームなど)、その他現場吹付の発泡ウレタンもありますね。

それでは、日本とほぼ同じ緯度にあるヨーロッパはどうでしょう?

ヨーロッパにおける断熱材シェア 出展:European Association for External Thermal Insulation Composite Systems (EAE)

上記の地図はヨーロッパでの断熱材のシェアを示したものです。EPSとはビーズ法発泡ポリスチレン、いわゆる発泡スチロール断熱材のことです。MWとはミネラルウールすなわち繊維系断熱材の事です。日本ではグラスウールなどにあたるものです。

ヨーロッパの街並み

見ると、ほとんどの地域で、EPSが60%~80%の断熱材シェアを持っているのが分かります。全ヨーロッパでは(左上In total)8割以上がEPS、次いでMWが10%程度と、ダントツで発泡スチロールが使われていることが分かります。同じポリスチレンを使った断熱材であるXPS(押出法ポリスチレン)もありますがあまり使われていません。

これはドイツがEPSの発明された場所ということ、そして石造り、コンクリート造りの建物を断熱するのにEPSは非常に都合が良い、ということが考えられます。もちろん、断熱性能が長期にわたって変化しないということも採用されている大きな理由の一つだと思います。

なぜ日本ではEPS断熱材のシェアは少ないの?

残念ながら日本ではそれほどEPSの断熱材のシェアは多くありません。これはなぜでしょう?

昭和30年代にEPSの技術がドイツから日本に入ってきて、ヨーロッパと同様に当初は断熱材として発泡スチロールを販売していたようです。但し当時の日本住宅の建築様式は断熱をすることが一般的ではなかったようです。

そこでメーカーはいろいろな梱包材、緩衝材、魚箱、野菜箱など日本の内需にあった用途を伸ばしていきました(今でも発泡スチロール使用量の半分は魚箱保冷箱などの容器の用途です)。そして家電の梱包材、鮮魚を入れる魚箱としてなくてはならない存在となったのです。

逆に断熱材は、というと、グラスウール、XPSがどんどんシェアを広げていって今のような形になったと思われます。

ヨーロッパの断熱材事情についてまとめ

私たちは、EPS断熱材はこれからの日本の住宅市場にはなくてはならないものだと考えています。なぜなら、EPSの「長期で断熱性能が変化しない」「吸水率がほぼゼロ」「加工しやすい」「リサイクルしやすい」といった特性は住宅の断熱材として最適だと思うからです。なによりヨーロッパで長年使われていることがその証だと思います。

生活様式においても、既に古き良き日本の文化は失われつつあり、海外の生活のように変化していると感じます。それは住宅事情だって同じです。日本建築は少なくなり、海外仕様の住宅が増えているのが現実です。

それに伴って建材だって変わります。時代遅れの断熱材を使用するのではなく、最先端の断熱材を使用して長く、快適な生活をこれからも過ごしていきましょう。

 

文中の図表は下記で詳細を見ることができます。よろしければどうぞ。

EUMEPSのHP

http://eumeps.construction/downloads のOverviewからダウンロードできます。

断熱材.jp監修者コメント

監修者

堀 清憲(気密測定技能者)
Hori  Kiyonori

しっかり断熱をすることで、省エネ効果の高い住宅になることは容易に想像できますが、もう1つ大きなメリットがあります。断熱性能の低い家に住んでいる場合と高断熱住宅に住んでいる場合とでは、健康に対する弊害が生じる可能性も異なります。断熱は家の基本性能。皆さんが快適に暮らせるよう断熱材を通してお手伝いしていきたいと思います。

最終更新日: