断熱等級5・6・7って何?
新築やリフォームを行う際、住宅の性能を考える上で大切なのが断熱性です。
光熱費を抑えながら夏涼しくて冬温かい家づくりをめざすのであれば、断熱性に優れた材質や工法を検討する必要があります。
この断熱性に関する国の基準が2022年に改定され、新たに5・6・7の新等級が設けられました。
今回は住居の快適性だけでなく、将来の家の価値にも大きく関係する新基準について解説します。
【今回の記事のポイント】
✓断熱等級についてや、これからの断熱基準についてがよくわかる。
更新日:2023/5/24
初稿:2022/10/18
《目次》
・そもそも断熱等級ってどんなもの?
・日本の断熱基準は世界的に見てどうなの?
・断熱基準はどう変わるの?
・断熱等級5・6・7は家づくりの新基準!
そもそも断熱等級ってどんなもの?
住宅の性能をはかる基準には「構造の安定」「火災時の安全」「劣化の軽減」など全部で10の性能表示区分があり、これらを総合して家屋としての価値が決められます。
このうち、「温熱環境・エネルギー消費量」の項目に分類され、ランクによって省エネ性能の品質の高さを規定するのが断熱等級です。
断熱性に優れていると外気温度が家屋に影響しにくくなるため、夏は涼しくて冬は暖かいという室内環境を実現することが可能です。
室内の温度差がないことは、気温の急激な変化によるヒートショック現象も起こしにくくなるため、高齢者にも安心な住環境が生まれます。
つまり、快適と健康の両方を手に入れることができる点で家づくりの重要な指標の一つとなるのが、この断熱性です。
国が定めた断熱性の等級は1999年以来、4等級までと定められていました。
しかし、2022年に「住宅性能表示制度」の改定により、4月に5等級、10月には6等級・7等級が創設されて、23年ぶりに一気に7等級まで増えることになりました。
新設された3等級の内容に触れる前に、従来の4等級までの内容を確認しておきましょう。
2022年4月以前まで最上等級だった4等級は「次世代省エネ基準」として1999年に制定、天井や壁などに加えて窓や玄関にも断熱基準が設けられた点が特徴でした。
3等級はそれ以前の1992年に制定されたもので、この時点では「新省エネ基準」と言われていました。
2等級は1980年の制定で省エネのレベル的にはまだ発展途上段階でした。
2~4等級以外の仕様に関しては1等級としてまとめられていました。
省エネ性能は、UA値によって規定されます。
UA値とは「外皮平均熱貫流率」のことで、室内・室外間で熱がどれくらい通りやすいかを示した値です。
UA値が小さいほど熱の出入りが抑えられ、断熱性が高いことを示します。
地域によって寒暖差が生じるため、全国一律には数値を定めることができませんが、例えば東京では4等級が0.87以下、3等級が1.54以下、2等級が1.67以下であることが求められます。
そして、新たに創設された5等級では0.6以下、6等級では0.46以下、7等級では0.26以下という基準をクリアしなくてはならなくなりました。
ちなみに、5等級のUA値0.6以下という数字は省エネをはかりながら快適な居住空間をめざす「net Zero Energy House(ZEH)」のUA値0.6以下と完全に一致しています。
ZEHは、国のエネルギー基本計画の中で「2030年までに新築住宅の平均でZEHを目指す」と定められた省エネ住宅を指し、家全体の断熱性を考える上で今後の主流をなす指針として位置づけられているものです。
日本の断熱基準は世界的に見てどうなの?
国の断熱基準が一気に上がった感のある今回の改訂ですが、世界的に見るとまだ高いとは言えず、例えばヨーロッパの多くの国では断熱等級が6未満の新築住宅は違法建築とみなされるほど厳しい基準が設けられています。
これはEU(欧州連合)の取り決めによるもので、2021年以降に建てられる住宅は「nearly Zero Energy Building(nZEB)」、つまり「外部からのエネルギーをほぼ必要としない建物」とする条件が義務化されるようになったからです。
EUの最終目標は2050年までに建築物に関わるエネルギー消費を8割削減(1990年ベース)することで、これによって二酸化炭素排出量の9割削減を目指すとしています。
この流れに従うと、6等級が適正とされる現在の断熱基準が将来は7等級に引き上げられることも十分に予想されます。
EUが断熱等級に厳しい基準を設けた背景には、世界規模で課題となっている脱炭素政策の影響があります。
脱炭素に関する国際的な公約を履行するためには、民間の住宅政策においても効果的に計画を推進する必要が生じてきます。
2050年のカーボンニュートラルを前に、ヨーロッパをはじめとする世界的な断熱基準の厳格化に沿う形で、諸外国並みの基準を導入しなくてはならない状況にあるのが日本の現状です。
基準の見直しが前回の制定から23年ぶりとなり、この間に民間が自主的に制定している断熱基準に後れを取っていることも、断熱等級5・6・7を新設した一つの理由であると言えます。
断熱基準はどう変わるの?
断熱等級5・6・7の新設とともに、2025年には断熱等級4が適合義務化となります。
つまり、2022年3月以前までは最高等級であった4等級が法律上クリアしなくてはならない最低基準となるわけです。
ただし、4等級は「次世代省エネ基準」と銘打っているものの、制定されたのは1999年と古く、天井や壁以外の窓や玄関にも断熱素材を用いてUA値を抑えようという省エネ住宅としては必須レベルの設定基準と言うこともできるため、断熱仕様の現状を正確に把握しづらいというもどかしさもあります。
そこで、国が定めたこの基準と併せて、民間が先行して運用している独自の基準と照合することが有効になってきます。
断熱基準をはかる物差しとして民間で用いられているのが「HEAT20」です。
これは断熱仕様の普及を目的に創設された民間団体「一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が定めた断熱基準で、性能が高くなっていくにつれてG1、G2、G3と数字が大きく示されていくものです。
この基準を先ほどの東京都の例に照らし合わせてみると、「HEAT20」のG1ではUA値が0.56となり、断熱性能等級5のUA値0.6(ZEH基準)とほぼ同じになります。
さらに「HEAT20」のG2ではUA値は0.46で、これは断熱性能等級6のUA値0.46と同じです。
さらに「HEAT20」のG3ではUA値が0.26となり、これも断熱性能等級7のUA値0.26と全く同じ値になります。
ちなみに、国が2025年までの義務化を求めた4等級は「HEAT20」には該当がありません。
※地域区分…【1・2/北海道】 【3/青森・岩手・秋田】 【4/宮城・山形・福島・栃木・新潟・長野】
【5・6/茨城・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・富山・石川・福井・山梨・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀・京都
大阪・兵庫・奈良・和歌山・鳥取・島根・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・高知・福岡・佐賀・長崎・熊本・大分】
【7/宮崎・鹿児島】 【8/沖縄】
このことから、国は4等級を義務化の基準に定めていますが、民間の目線はさらにその先を見据えていることが窺えます。
日本から世界に目を転じると、例えばイギリスはUA値0.42、フランスは0.36、ドイツは0.4、アメリカは0.43を法律で義務付けており、これは日本の断熱等級の6・7に該当するものです。これらの流れを考えると、今後の家づくりのポイントが浮き彫りになってきます。
まず1つ目のポイントは、2025年以降断熱等級4が義務付けられることから、3以下の家に関しては「既存不適格建築物」となってしまう恐れがあるということです。
既存不適格建築物とは、法令の改正などにより建築物としての適格性を失ってしまった物件を言います。
さらに2つ目のポイントとして、断熱基準としてクリアすることが義務付けられる4等級で家を建てたとしても、10年後あるいは20年後にはやはり既存不適格建築物になる恐れがあるということです。
2050年のカーボンゼロを前に、脱炭素化への取り組みペースがいっそう早まる可能性があります。
世界がすでにその潮流を迎えているように、日本でも法律の改正が進むかもしれません。
そうなった場合は、4等級の家であっても資産価値が保てているかどうかは甚だ疑問です。
これらを考えあわせると、価値あるままで残す今後の家づくりには少なくとも断熱基準6以上の技術を持っている工務店に相談することが必要になってくるでしょう。
現時点で6や7の断熱等級に対応できる工務店は、すでにこの先を見据えた事業計画に取り組んでおり、資材の開発や仕入れルートの開拓など常に企業努力を重ねていると考えられます。
大切な資産であるマイホームをこの先も価値ある形で残していくためにも、工務店選びは慎重に行いたいものです。
断熱等級5・6・7は家づくりの新基準!大切な家を価値あるままで残すには6等級以上に対応可能な工務店を
住宅の省エネ性能をはかる基準である断熱等級は2022年に国の制度が23年ぶりに改定され、これまでの4等級に加え、5・6・7等級が新設されました。
2025年には4等級が適合義務化となり、基準に達しない建物は既存不適格建築物として価値が下がります。
さらに新設された5・6・7等級が今後の断熱基準の主流となることが考えられるため、先を見据えた価値ある家づくりをするなら6等級以上の技術を持つ工務店に依頼するのが安心です。
弊社で取り扱っている【iZA Panel】なら等級高いものを目指すことができる商品です。
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断熱材.jp監修者コメント
堀 清憲(気密測定技能者)
Hori Kiyonori
しっかり断熱をすることで、省エネ効果の高い住宅になることは容易に想像できますが、もう1つ大きなメリットがあります。
断熱性能の低い家に住んでいる場合と高断熱住宅に住んでいる場合とでは、健康に対する弊害が生じる可能性も異なります。
断熱は家の基本性能。皆さんが快適に暮らせるよう断熱材を通してお手伝いしていきたいと思います。