HEAT20とは? 長期的・省エネを実現
近年の住宅建設に於いて、断熱性能を気に掛ける方は多いのではないでしょうか?そんな中、新しい断熱性に関する評価基準を定めたのが「HEAT20」になります。また、深刻な環境問題を背景に省エネルギーを推奨しているものでもあります。
「HEAT20」は「Investingation committee of Hyper Enhanced insulation and Advanced Technique for 2020 house」の略称になり、「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」のことです。
地球温暖化とエネルギー、そして居住者と快適な暮らしを考え、2009年に研究者や住宅・建材生産者団体の人たちが集まって発足した団体です。
【今回の記事のポイント】
✓HEAT20のメリットや推奨基準などがわかる。
更新日:2023/9/27
初稿:2021/6/26
《目次》
・HEAT20が目指す快適住宅
・HEAT20で得られるメリット
・HEAT20の推奨基準とは?
・HEAT20についてのまとめ
この団体では、室内温熱環境のあるべき姿や住宅の省エネルギー基準とは少し異なる観点から独自の断熱基準を提案しています。この基準はかなり高く、その中でも「G1・G2・G3」と段階的に分けられている細かな基準となります。
各地域において、冬の期間に室内の体感温度を10℃~15℃以上に保つことや、暖房の負荷を大幅に削減することを目指し、よく聞く「ZEH」(ゼロ・エネルギー・ハウス)などの優れた省エネ住宅と同様に推奨しています。
HEAT20が目指す快適住宅
HEAT20では「明日の住まいの方向性を示し、技術を具現化、そしてそれを促進するための提言をすること」と謳っています。そのためにポイントとなるのが以下の3点の要素になります。
- 健康的要素
- 設備的要素
- 創エネ的要素
この3つの要素をバランスよく組み合わせて建てた住宅を目指し活動しています。
では、この要素がどんなものを指すのか?具体的に紹介していきます。
・健康的要素
断熱性能が低下することで人体に悪影響を与えることがあります。近年では住宅内での死亡の原因の多くがヒートショックによるものだとされています。ヒートショックとは、お風呂場や脱衣所などで起こり、急激な温度変化によって心筋梗塞や脳梗塞といった症状を起こすことを言います。主に、高齢者の方が多く、急激な温度差に対応できず亡くなってしまうようです。
・設備的要素
HEAT20の基準に値するには24時間換気システムなどの設備導入が必要となります。
高効率なシステムの導入により、断熱性能との相乗効果を図ります。中には省エネのエアコンや、少ない消費電力での給湯器システムやLED電気の取り入れなども含まれます。
せっかく外部からの影響を軽減するように高断熱の断熱材を使用したとしても、室内で過度に電気を使ってしまっては意味がありません。
・創エネ的要素
創エネとは、住宅自ら電力を創出することを指し、太陽光発電などを採用し自給自足の住宅を目指すことを言います。この創エネの対象となるには消費電力よりも創り出すエネルギーの方が上回らなければなりません。
また、災害による停電などが起きた際にも太陽光発電システムにより蓄電できたり、創出した電力を電力会社に販売することも可能となり、副収入を得ることが出来ます。光熱費を抑えることだけでなく、副収入も得られ、安心安全に暮らすことができるのは大きなメリットと言えるでしょう。
HEAT20で得られるメリット
HEAT20にすることで得られるメリットは大きく分けて3つあります。
・快適な暮らしが手に入る
断熱性能を高めることで暖房がない場所でも暖かく、リビングとの温度差もほぼ変わらずに過ごすことができます。従来の家で起きていたような、廊下に出たら寒くて床も冷たいと感じるような現象は著しく減ります。また、断熱性能が高い住宅は熱が外へ逃げにくく、室内の温度の低下も緩やかにしてくれます。そのため、一旦冷暖房機器を止めたとしても保温・保冷状態が続きます。
・経済的な効果がある
上記で述べたように断熱性能が高く、保温・保冷効果が見込めることで冷暖房機器などの使用回数減り、ランニングコストの節約に繋がります。月々で見たらそこまで大きな減額には見えなくても年間で見ると数万円の削減が可能になることもあります。
光熱費が高くなりやすい夏場や冬場には嬉しいメリットです。日本のように縦長の国で四季がハッキリとしている地域にはかなり有難いですよね。
また、新築で高断熱住宅にすることで後にリフォームなどで断熱性能を高めるよりもトータルコストが割安になるようです。
・健康的な住宅で安心
前途でおした通り、ヒートショック現象を抑える他にも、喘息やアトピー性皮膚炎などの改善率が高いことも判明しています。これは断熱性能が高まることで表面温度を上げ、水蒸気も減り、結露やカビが起きにくい空間をつくっていることからかもしれません。
HEAT20の推奨基準とは?
HEAT20では断熱性能をグレード分けしています。「G1・G2・G3」となり、G3が一番グレードが高いとされます。
この基準は、全国をそれぞれ地域ごとに分けることでそれぞれの基準値やUA値を設定しています。日本は北と南で気温が大きく異なりますから、その土地に合わせて基準を決めることでそれぞれの土地での断熱性能や快適性を高めることが出来ます。
外皮計算という計算式によって算出された数字で地域によって標準的な基準を査定しています。地域区分は1~8に分類され以下の通りになります。(※UA値・・・外皮平均熱貫流率)
1地域: 佐呂間町等
2地域: 札幌市・旭川市等
3地域: 盛岡市・青森市等
4地域: 秋田市・山形市等
5地域: つくば市・仙台市等
6地域: 大阪、東京等
7地域: 鹿児島市・高知市等
8地域: 沖縄
国がつくった基準として省エネ基準やZEH基準などがありますが、それでは手ぬるいということからHEAT20は新たな基準のグレードをつくりました。
真冬でも室内温度が寒くならないように基準を設定していて
G1: 室内温度が10℃を下回らない
G2: 室内温度が13℃を下回らない
G3: 室内温度が15℃を下回らない
このように基準が設けられ、日本の住宅事情の中ではかなり厳しい基準となっています。
これだけ厳しい基準ですから、既にある物件をこのグレードまでもっていくのにはかなり労力を使うので、新築時に行うのがベストとされています。
また、諸外国の住宅事情を見てみても、日本の断熱性能はまだまだで、近隣の韓国や中国と比較しても日本は劣っているようです。そう考えると日本の今までの住宅は何だったのか…と疑問が浮かびます。
今までご紹介した通り、HEAT20のグレードの他にも国が定めた基準がありますが、果たしてヒエラルキー的にはどのようになっているのでしょうか?ランキング形式でお話していきたいと思います。
第6位 平成28年の省エネ基準(国が定めたもの)
省エネ基準は昭和55年に制定され、平成4年、平成11年に改正・強化、更に平成25年には住宅の外壁や窓などの断熱性能に加え、設備や省エネを総合的に評価する一次エネルギー消費量の基準が加わりました。それ以降も改正や強化を繰り返し、現在に至っています。
省エネ基準は一次エネルギー消費量に関する基準と外皮熱性能に関する基準の両方から構成されています。一次エネルギー消費量というのは全ての建物について、空調や照明、換気に給湯などの設備エネルギーや太陽光発電などの創出量などを一定の条件で算出した数値で測ります。
外皮熱性能もまた、一定の条件によって算出された数値を基準に外壁や窓の外皮平均熱貫流率、平均日射熱取得率などを地域によって定めたものになります。
第5位 ZEH
こちらは最近よく耳にする基準ではないでしょうか?ZEHとはゼロ・エネルギー・ハウスの略になり、【断熱・省エネ・創エネ】を目的として定められた基準となります。
高性能な断熱材の使用や、省エネとなる設備の設置、そしてエネルギーを創出する太陽光発電システムなどの導入によりクリア出来る基準となります。国からの要請が出たことで大手ハウスメーカーや工務店、設計事務所など、現在では多くの会社がZEHを推奨する会社として登録しています。
また、国としての政策ということもあり、新築時などには補助金制度などもあります。それにより、国がいかにZEHを進めたいのかという意図が伺えます。
第4位 G1グレード
ここに来て、やっとG1グレードが入ってきました。G1の基準はZEHに近いもので性能が高く、コストパフォーマンスが良いとされています。大手ハウスメーカーの標準仕様にもなっていたりと、ZEH同様に周知されてきている方です。
高断熱の窓などを採用し、冬季の室内温度を10℃より下回らないようにすることでG1基準に値します。
第3位 ZEH+
名前の通り、ZEHよりもハイグレードにしたのがZEH+(ゼッチ・プラス)です。ZEHの基準に新たな条件が加わることで、より高性能な住宅設備が求められます。ZEHでは再生可能エネルギーを除いて一次エネルギー消費量から20%以上の消費量削減を目的としていましたが、ZEH+では25%以上の削減が定義とされています。簡単に言うと石油や石炭、天然ガスのような再利用できないエネルギー消費を25%以上減らしてくださいということになります。
そして、自家消費を意識した再生可能エネルギーの促進ということで外皮性能の更なる強化や、高度エネルギーマネジメント、電気自動車を活用した自家消費の拡大借置のうちの2つの要素を採用しなければなりません。
第2位 G2グレード
G1の基準よりも更なる環境を目指すのがG2です。ここまでくると設備やシステムは既に導入されているので、如何に効率よく、エネルギー消費を減らせるか?という話になってきます。数値でいくと、室内温度が13℃を下回らないようというのが基準ではありますが、住宅の構造や使用している設備の組合せなどをマネジメントして基準値に合わせないといけません。そのため、設計段階での思考錯誤が必要となり、中古物件やリフォーム・リノベーションをしての到達はかなり厳しいかもしれません。
第1位 G3グレード
正に第1位はG3です。G3は最近になって新しく誕生した基準で、ドイツのパッシブ住宅を目指した基準値になります。既にG2グレードは日本の最高等級と言われているのでG3グレードとなると世界水準に匹敵するものかもしれません。
そのため、室温も最低でも15℃を下回らないという高いハードルになり、考え方的には冬場でも暖房が不要になるほどの基準となります。本当にこのG3グレードが実現できるとなるとかなりのコストダウンにもなり、快適な生活が一年中送れるということになります。想像しただけで素晴らしいですが、本当に実現が可能か疑心暗鬼になってしまいますね。現在のようなハイクオリティな技術や商品があるからこそ実現できる基準ですね。(地域によって基準はことなります。)
HEAT20についてのまとめ
いかがでしょうか?HEAT20についてご理解いただけましたか?
環境問題に対する考え方や政策が各国と比べてまだまだ追い付いていない日本では周知されたり実施されるまでにはまだ時間がかかるかもしれませんが、これから先の未来を考えると進めなくてはいけないものとして、少しづつ普及していくことでしょう。
これからはもっと国や自治体をあげて取り組むようになり、ZEHやHEAT20の基準が当たり前になる日が来るかもしれません。快適で暮らしやすい住宅は人にも家にも、そして環境にも優しいものへとシフトしていきます。
HEAT20の基準に達するためには高性能な断熱材は欠かせません。そのため弊社で取り扱っているパイナルフォームなどの優良断熱材の採用も増え、長期的で安心安全に配慮した断熱材が主要となってくることと思います。まずは、無料サンプルにてパイナルフォームの良さを実感してみませんか?
コラム監修者からのメッセージ
堀 清憲(気密測定技能者)
しっかり断熱をすることで、省エネ効果の高い住宅になることは容易に想像できますが、もう1つ大きなメリットがあります。断熱性能の低い家に住んでいる場合と高断熱住宅に住んでいる場合とでは、健康に対する弊害が生じる可能性も異なります。断熱は家の基本性能。皆さんが快適に暮らせるよう断熱材を通してお手伝いしていきたいと思います。