断熱材だけじゃないEPS材の様々な用途
今まで、何度もEPS材の断熱材についてお話をしてきましたが、実は、EPSは住宅の断熱材だけじゃないんです!もちろん、断熱の効果が高いことで断熱材として脚光を浴びていますが、それ以外でもEPSの持つ性能が生かされ、各所で使用されています。
思ってもみなかったところでの使用があり、EPS材の価値がより一層高まったような気がします。皆さんの身近なところでもEPSを使用したところがあるかもしれません。また、それを知ったことで、今後も更なる活躍の舞台が出てくることも考えられます。
そう思うと、万能で奥が深く、それでいて使い勝手がいいEPS材は可能性しかない建材かもしれません。何かを製作中、あるいは建設中、検討中の会社や個人の方には思い掛けないヒントに繋がることにもなるかもしれませんね!
では、EPS材の断熱材以外の用途をこれから事例をあげて、ご紹介していきたいと思います。
【今回の記事のポイント】
✔️EPS材の様々な使い道がわかる
更新日:2023/12/25
初稿:2020/12/17
《目次》
・建造物や設備にも大活躍
ー建造物の緑化にお手伝い
ー建物の基盤として
ー配管などにも最適
・実はこんなところにも!
・最後にEPS材の用途についてまとめ
建造物や設備にも大活躍
建造物の緑化にお手伝い
【壁面緑化】
最近、ショッピングモールや大型施設などでよく目にする壁面緑化。こちらは壁面に緑を施すことで無機質なビルの存在感をなくすことや、環境配慮、そしてデザインとしても人気が出てきて施されています。もちろん、緑の植物は生き物ですから、そこに水や土や肥料などが必要になってきます。
普通、一般的には鉢植えやプランターなどの容器を使用したりしますが、そこで使用してしまうと壁面ですので重さや、水漏れなどの問題点が出てきます。その時、最適だったのがこのEPS材です!
その軽量性と、どんな形にも成型できる加工性、そして耐水性があることで問題は解決します。花壇のようなコンテナをEPS材で製作し、壁面へ取り付けていきます。そこに植物を植えこむだけで壁面緑化は完成します。EPSを使用すると土の量も少なくて済み、水の通り道を確保することで根腐れなどを起こさずに済みます。
【屋上緑化】
こちらも壁面緑化と同様、屋上へ大量の土を運び、使用するよりも遥かに軽量な土で済みます。屋上というだけあって風当たりや温度も上下しやすいですが、断熱材としても使用されるEPS材であれば屋根断熱として併用して使用が可能です。
屋上緑化だけでなく、屋上庭園や屋上菜園などにも最適です。都会のような土地が少ない場所で、緑が少ないと懸念されている現代では画期的で、太陽に近いことで植物の育ちも良くなることでしょう。
建物の基盤として
【プールの基礎】
例えば、軟弱な地盤の場所にプールを建設したいといった時にもEPSは大活躍です。軽量だけど強度があるEPS材は基礎部分に下地としても採用されます。これで、どんな地盤の場所でもプールを創り出すことが可能になります。地盤は調査してみないとわからないところが沢山あります。しかし、EPS材のお陰でそういった懸念される場所でも地盤を一度良くしてからなどという手間もコストも省くことが出来ます。
【建物床の嵩上げ(かさあげ)】
例えば、堤防を築く際や、土地を高くしたい場合などの嵩上げ(かさあげ)。ここでもEPS材は役立ちます。寸法の自由度も大きく、様々な形状に対応可能なのが嬉しいです。昔のように土を盛ったりする手間や技術も必要ありませんし、何よりも崩れにくくなります。
【ホールの床材】
音楽ホールなど階段のように段々になっている段差の作成もEPSであれば容易です。また、断熱材としての効果の他に遮音性も含まれるので最適です。軽いので作業性も良く、仕上げ材によって面で支えるため、形状の安定性も保たれます。
【ショッピングモールなどの装飾】
様々な形状が作り出せるEPS材はモールなどの心材としても利用されます。アーチ型のエントランスや、お城のような小さいモニュメント、TVでよく目にするようなセットの背景部分などでも重宝されます。外見だけでは塗装や装飾することで、石材やその素材そのものに見えても、軽くて安心でき、容易に造作が可能なのが選ばれる理由でしょう。
配管などにも最適
【パイプカバー(保温筒)】
パイプカバーと言って、よく配水管や、空調の大きなダクトなどで保温や保護のために金属の管部分を覆うことがあります。昔よく目にしたのは、黄色い綿状のグラスウールなどで覆っていることが多かったんですが、最近はぴったりサイズに合わせたEPS材を使用して、管に装着するような形で設置することが多くなってきました。と言うのも、軽量且つ、作業が簡単に行えることに踏まえ、保温効果や劣化に於いても優秀な素材であるからです。
どんな形状にも合わせてつくることができ、大型のものであってもパーツごとにカットしブロック化することでブロックのようにはめ込んでセットができます。複雑な曲線部分や、バルブ部分でもきれいに施工することができるので作業する方の作業効率は各段に上がったことでしょう!
また、元々持っているEPSの特性としての熱伝導率の低さから断熱材としての効果もありますから、温泉施設の配管など、温かさを保つ必要のある配管などには最適ですよね!
実はこんなところにも!
- 港の船場にある浮き(フロート)や、漁で目印になるブイ
EPSは簡単に言ってしまうと発泡スチロールと同じですから、軽くて水に浮きます!そのため、船を停泊させる際に、船に傷が付かないように周囲に置く浮き(フロート)や、漁をする際に網を仕掛けた場所を示すブイなどでも使われています。耐水性にも優れていることで最適な素材になりますね!
- 鳥人間コンテストの本体にも!
これはびっくりですよね!よくTVで見る、あの鳥人間コンテストにも採用されるなんて嬉しい限りです!それもそのはず!やはり軽量でどんな形状にもなることが一番の採用理由なんではないでしょうか?また、惜しくも飛行が失敗した時でも水に浮きますから安心です。
- 坂本龍馬像にも!
もちろん、現地の本物ではありませんが、銅像などもEPS材を使用してつくることが出来ます!曲線や洋服のシワに至るまで、細かい部分も形状可能です。本体をEPSでつくった後に、塗装を施して本物のような像を製作することが出来ます。
- 獅子舞の頭部
こちらもびっくりですよね!獅子舞の頭は、古くからの伝統でいくと木を彫って作られますが、重さにより長時間の演武に体力を奪われます。しかし、この獅子舞の頭部をもEPSでつくることで軽くて丈夫な獅子舞になります。重量が全然違うので、長時間でも頑張れますね!
この他にも、例えば車のフロアスペンサーや、エコキュートの断熱材としても用いられていますが、まだまだ使用範囲は無限大です。私たちの知らないところでも様々な用途で使用されていると思います。
これほどまでに使用範囲が広いのは、やはりEPS材の特性である、軽量なところや形状が自由自在だということが一番ではないでしょうか?他の素材では難しかったことでもEPS材であれば可能になることはまだまだあるかもしれません。
最後にEPS材の用途についてまとめ
思っている以上に幅広く利用されているEPS材。先ほどもお伝えした通り、やはりEPSの軽量さと、複雑な形状にも対応できることが強みで、そこに耐水性だったり、断熱効果があったりと様々な効果をもたらすことで選ばれる素材になったのでしょう。
EPS材は発泡プラスチック系の中でもビーズ法ポリスチレンフォームになります。押出ポリスチレンフォーム(XPS)とも製法は違えど、ポリスチレンを原料とした発泡スチロールと同じといってもいいでしょう。皆さんの周りでも日々、色々な形で発泡スチロールをご覧になっていると思います。それだけ、このEPSという素材、発泡プラスチック系の素材は需要があり、高性能な素材になります。
上記にあったような用途で、屋外で使用する場合、よく聞く発泡ウレタンなどの吹き付け型は使用せず、こういったパイナルフォームなどの板状(フォーム)が有効的です。だからこそ、他方で採用されるようになったのも間違いないでしょう。またカビなどの発生も少なく、長期的にみても有能な素材です。
これからもきっとマンションや一戸建てだけに留まらず、品質向上や、技術開発によってもっと様々な場所での活躍が期待できると思います!まだまだEPS材を必要としている現場があるかもしれませんし、実は私たちの知らないところで使われていたなんてこともあるでしょう。
今後も多岐に渡る存在で、皆さんの生活や住まいを豊かに出来れば何より嬉しいことです。もし何か、こんなことに使用したといったご要望や、ご相談がありましたらお気軽にお問合せください!全力でお手伝いさせていただきます。なお、メーカーや価格、規格など知りたいことがあればそちらも含めてお答えいたします。
コラム監修者からのメッセージ
堀 清憲(気密測定技能者)
しっかり断熱をすることで、省エネ効果の高い住宅になることは容易に想像できますが、もう1つ大きなメリットがあります。断熱性能の低い家に住んでいる場合と高断熱住宅に住んでいる場合とでは、健康に対する弊害が生じる可能性も異なります。断熱は家の基本性能。皆さんが快適に暮らせるよう断熱材を通してお手伝いしていきたいと思います。